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リサイタルプログラム解説(第2部)

  • 執筆者の写真: ひでみ
    ひでみ
  • 2019年8月20日
  • 読了時間: 5分

*****「女の愛と生涯」について*****

シャミッソーという詩人が書いた詩で、9篇で構成されている。シューマンだけでなく、

他の作曲家もこの詩に曲をつけている。シューマンは、最後9番目の詩には曲をつけていない。

この作品は、とある女性が男性と

「1、出会い」

「2、彼の素晴らしさ」を語り、

彼に「3、見初められ」

「4、結婚指輪」をもらい、

「5、結婚式」をして、

彼によく似た子どもを「6、出産」し母となり

「7、子どもの大切さ」を知り

「8、夫と死別」するという生涯を描いた作品だ。


1、あの人に出会ってから

「ある日、女は男と出会う。少女の世界から見ていたものが、何も見えなくなってしまった。その男に向かう心だけが女の世界になり、昼間に夢を見ているように目の前にはいつでもその男の姿がちらついている。妹たちともそれまでは楽しく遊んでいて、それが元々は少女であった女の世界だったが、今では静かな部屋で一人泣いていたい。」このような内容である。私は、少女から女性へと心が変わった瞬間を描いているように感じた。冒頭のピアノの和音がとても印象的で、優しく確固たる強さに溢れているようだ。

2、彼って、誰よりも一番素敵だわ

「容姿端麗で明るく優しく勇気もある、素敵すぎて私なんかには全く手の届かない輝く星の様。私は彼に選ばれる事なんてありっこないんだから、誰か他の女の人が選ばれれば、喜んで祝福しましょう。」と、これは恐らく全く反対の心で歌われる曲なのではないか。この女性の性格がよく現れている詩である様に思う。自分が彼を思う心が強過ぎて、その強さで自分の心を滅ぼしてしまうのではないかという無意識の自己防衛で、彼が自分を選ばなかった時のショックを少しでも減らすためのものなのではないかと感じた。


3、わからない、信じられない

「彼が自分を選んでくれた事が、全く信じられない。どうして私なんかを選んでくれたのかしら。」実際に彼からも、僕は永遠にあなたのものだ、という言葉をもらった様で、これも夢なんじゃないかと、信じられない様子が描かれている。私のことは振り向いてもくれないだろうと自己暗示をかけていた女性に、彼からの言葉。死んでしまいそうな程の喜びと幸せを感じているけれど、どうやってこれを信じたらいいのかという心が描かれた一曲。この曲の最後でピアノが安心する響きに変わる。ここでようやく、状況が飲み込めて、信じられる様になるのではないか。

4、指輪よ

「私の指にはめられてた小さな金の指輪よ、お前をそっと唇にあてて胸にあててみるの。すると、少女の頃の平和で美しい夢から醒めてしまった。そしてお前は教えてくれた、この人生の限りなく深い意味を。私は、あの人のためにすべてを捧げて生きましょうあの人の輝きのもとで私も光り輝くの。」シューマンの歌曲のピアノパートはどれも素晴らしいが、この4曲目は特に美しいと感じた。私がこの組曲をいつか歌ってみたいと思ったのも、この曲を聴いた(歌を聴いてた印象より、ピアノを聴いて素晴らしいを思った)のがきっかけだった。高校2年か3年かの話である。当時、この曲を実際練習してみると全く上手くいかなかった。シンプルな曲調で簡単な様に聴こえたから、簡単に歌えるだろうと思ったが甘くはなかった。十何年越しにやっと最低限歌える様になり、素晴らしいピアニストと一緒に音楽をつくることができて、ただただ幸せです。

5、手伝って、妹たち

「ウエディングドレスを着たり、ミルテの花の頭飾りを飾ったりするのを、妹たちよ手伝って。花びらを、バラの蕾を撒いてちょうだい、妹たちよ。私は敬虔な気持ちで彼の元へと行きます。とても幸せ、だけど、妹であるあなた達とお別れの挨拶をしなければならないのは、ちょっと寂しいわ。」舞い踊る様で、とても軽やかな心を持った曲。素直で可愛らしい女性の性格が見て取れる。慌ただしくも、結婚式の準備をして、最後には結婚行進曲が流れてくる。

6、愛しい人、あなたは見てるのね

「なぜ私が泣いているのか、愛しいあなたはわからないでしょう。この幸せをどうやって言葉にしたらいいのかしら。こっちに来てちょうだい、喜びのすべてをあなたの耳にささやくわ。これで泣いているわけがわかったでしょう。そして、あなたを抱きしめていたいの。かたくかたく!ほら、私のベットの側にゆりかごを置く場所があるでしょう。ここに私たちの素敵な夢を隠しておきましょう。やがて朝が来て夢からさめた時には、あなたにそっくりな顔が私たちに微笑みかけてくれるのよ。」出産を終えて、愛しい夫によく似た赤ちゃんがゆりかごで眠っている様子が描かれている。この時点では、自分たちの子どもに対する気持ちというより、愛する夫に対して向かう心が主である様な印象を受ける。

7、私の心には、私の胸には

「私の心には胸には、幸せで喜びである赤ちゃんがいる。幸せは愛することで、愛することができて幸せ。私はこれまでも幸せだったけれど、今もっと幸せ。この子にお乳をあげて栄養をあげられて、慈しむことができて、ただ母親だけが感じられることなのね。男の人はかわいそうだわ。母になる幸せを感じることが出来ないなんて!」

8、今あなたは私に初めての痛みを与えた

「今あなたは、初めて貫くような痛みを、私に与えました。あなたは、冷たく眠っている。この世は空っぽで、残された私はじっと前を見ている。私は愛し生きてきた。愛するあなたがいないのならばもうこれ以上生きていはいけない。ヴェールをおろして自分の心の中に引きこもりましょう。そこにこそあなたが、そして私の喪われた幸せがあるのだから。あなたが私の世界だったの!」急転直下、夫の死が女を世界から隔離することになってしまう。自分の全てを、愛する夫に捧げた女性。自分の世界そのものである夫が死んでしまった今、もう、自分には何もなくなってしまった。「愛し、生きること(=女の愛と生涯)」これが女の世界の全てだった。

 
 
 

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皆さんお元気でしょうか。 なんというか、大変な日々で、この間にも目まぐるしく色んなことが変わっています。 変わったことをきっかけに、ここから、インターネットでいろいろと更新していこうと思います!まずは、ブログから!! よし!公言した!頑張る!!

 
 
 

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